2019.7.12
すってんのかってんの
熊本の方言で、
『 すってんの・かってんの(-言う) 』 という言葉がある。
【 つべこべ、 あれやこれや、馬鹿だのアホだの(-言う)】 の意味。
実家で暮らす母たちが日頃からよく使っているフレーズで、
地元で生活していなければ、なかなかお耳にかかることは出来ない。
8年前、この最強の 『 すってんのかってんの 』 に出くわした。
前年に健康診断で肺癌が見つかった親父は、その時すぐに外科手術を受けて、その後の経過は順調だった。
しかし1年後に再発が見つかり再入院が決まった。
前々から「もしも再発したら直ちに放射線治療となります」と担当医から説明を受けていたので
家族は皆、不安を抱えながら治療の経過を見守ることになった。
ところが、なかなか治療が始まらない・・・
再発の診断から何もしないまま、あっという間に2ヶ月近くが経とうとしていた。
聞けば、治療器の使用が順番待ちの状況なのだという。マジか・・・
熊本県内でも地方に位置するとはいえ、そこは数十~百床以上はある地域一番の総合病院。
いまどきの地域医療とはこんなものか、と思い知らされた。
私の妻も看護師として、以前に東京で病院勤めの経験があったので
そのギャップに驚きを隠せない。
癌の再発は時間との勝負、それくらいは素人でもわかる。
そもそも治療待機が予測されるんだったら、なぜ最初に言ってくれないのか・・・?
そうすれば、こちらもすぐに判断して
もう少し環境が整った病院へ移転するとか手が打てたはずなのに・・・
設備環境というよりも、スタッフの意識の問題・・・?
我々家族はそんな理不尽な想い、焦りを病院側へ向けていた。
その時
病床の親父が声を張った・・・
『 そぎゃん、すってんのかってんの言わんちゃよか、見苦しかろうが 』
( そんな、あれやこれや騒ぎたてるな、見苦しいだろ )
この極限の状況で、いまそれ言う・・・?? すごいな・・・
病室は静まり返り、それ以上まわりは何も言えなかった。
親父は最後まで親父だった。
--- 今日は親父の月命日。