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2021.4.8

思うこと

庵野さん

 

2週間くらい前にTVの某ドキュメント番組で
アニメ/エヴァンゲリオン(Evangelion)の作者、庵野秀明さんを特集していて
ザッピング中にたまたま見つけて、そのまま最後まで見入ってしまった・・・。

番組としては異例の4年間に及ぶ密着取材だったようで、その独特な人柄が何とも言えない面白さ。
放送直後にはヤフーニュースにも挙げられるほど。

自分でも少し落ち着いてから感想をブログに綴ろうと、
気付いたらあっという間に時が流れてしまいまして・・・。

 

 

リビングの傍らで一緒に番組を観ていたウチの嫁さんが
『 この人あなたにソックリ 』 と一言。

たしかに自分でも納得。
というか『 自分もこう在りたい、ここまでに成りたいよなぁ~ 』 って思いながら
最後まで観つづけてましたけど。

 

番組中盤では、
私も大好きなジブリの鈴木敏夫さんや宮崎駿さんも、旧知の庵野さんのことをこう表現している。

鈴『 少年がそのまま歳をとってオジサンになっただけ。』
 『 エヴァの主人公(碇シンジ)は彼そのもの。その素直さゆえ、現代社会の中で生きにくくなっている様が
  そのまま今の若者の共感を呼んでいる。』

宮『 はじめて出会った時に、こいつは面白い奴だと直感した。宇宙人でしょ。』
 『 彼は血を流しながらアニメを描いている。』

なかでも、宮崎さんの「彼は血を流しながら—」の表現が一番伝わったかも。

 

実際に庵野さんのアニメ制作に向き合う姿勢や思考はとても興味深い。
密着中のカメラに向かって庵野さんはこう言っている。

  ① 中心には作品があるわけで、自分が中心に居るわけではない。

  ② 自分の創造できる範囲(境界線)を、自分では絶対に超えられない。

  ③ 従来の(アニメ)作り方では従来の枠に納まってしまって、何ひとつ面白いものにはならない。

 

①と②は、庵野さんの行動からすぐにわかる。

制作スタッフ総勢が集まって打合せを繰り返す中、庵野さんは隅っこで沈黙したまま(笑
当然周りは原作脚本を書いている庵野さんがどう思うのか意見が欲しいので、
横目で庵野さんをチラ見したり、しなかったり・・・
ご本人はその空気を察しながらも、それでも一言も発しない・・・(笑

でもこれはこれで、
不器用ながらも徹底したブレイン・ストーミング(以下:ブレスト)なんだろう。

自分も将来、設計事務所でスタッフを数名抱える時がきたならば
もう少し器用にきっと同じことをすると思う。

 

そして制作締切りの直前、ラストの数週間は独りだけで部屋にこもって
これまでのスタッフが用意した膨大な資料たちをチェックしながら
すべて自分ひとりで決断して、作品に決着をつけていた。

 

何とも潔い。

 

ま、この決着方法がわかっているから
最初から周りのスタッフは、庵野さんが沈黙を続けようとも信頼してついてこれているんだろうね。

 

少し話が反れるけど、ブレストって誤解されがちなのが
あれは共同作業に見えて、実は単独作業。

皆で集まって意見を出し合っている瞬間は共同作業なんだけれども、
議案の入口と出口は同じ人物、なおかつ独りの人物で決断&決着をつけなければならない。

特に最後の出口が一番のカギ。何を採って何を捨てるのか・・・
そこの才覚は庵野さんの代わりは誰もいないって訳ですね。

 

これは我々の建築設計・建築デザインの業界でも同じこと。基本は単独作業。
複数人の建築家がセッションして、ひとつの作品を創り上げることなど、まず在り得っこない。

もしセッションを成立させたいのならば、
それぞれに異なった持ち場を絶妙に割り当てられたときに、きっと可能なんだと思う。
(まったく同じ持ち場だと反発し合うか、またはどちらか一方が吞み込まれてしまう)

ミュージシャン同士のセッションなんかが良い例で、あれは厳密には
お互い違う音楽ジャンル・テイストのアーティスト同士だから成立しているのだ。

 

 

話を庵野さんに戻す。
最後に③(従来の作り方をしていても決して面白くはならない~)だ。

 

アニメ制作工程は全然詳しく知らないけれど、
通常だと絵コンテからはじまって下絵、清書、とかの流れなんだろう。

そこへ庵野さんは生身の人間(アニメキャスト演じる俳優たち)にモーションキャプチャを付けて、
実写撮影しながら終始一番面白いカメラアングルを探るという手法。いや面白い。

「作り方を変える」と言われて、
すぐに同じアニメ界の高畑勲さんの作品「かぐや姫」が思い浮かんだ。

 

でも、この③の領域に手を出せるの人は、
どの業界でもそうだろうが、ごく僅かだろう。

その理由は単純で、世の人々の大半は
それはそれは日々当前のように「 飯を食うために、その仕事を生業として働いている 」からであって
「失敗を回避して成果を上げる」ことを無意識に選択し続けている。

でもそれだと永遠に③には辿り着けない。(辿りつこうとも思わないか)

そこは
『 自分はこの生業のために生きている 』 と思えてこそ、だと思う。

 

思い起こせば、自分も大学生の頃に恩師から
『 おまえら、食うために建築をやるのか、建築のために食うのか 』 と、よく言葉を掛けられていた。

当時は何のことかサッパリ、言葉の意味を理解できていなかったが、
社会人になって歳を重ねるごとにわかっていった。

 

まさに、庵野さんの少年のような背中を見れば
「僕はこのために生きている」とはっきり書いてある。

 

・・・そろそろ自分もそこへ辿りつきたいです。

 

 

つづく

 

 

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