佐賀県のほぼ中央、小城市は小城町。南方に拡がる有明海の干拓地から心地良い潮風が吹き抜ける長閑な地域。3年前、美容製品を取扱う地元の老舗企業が業150周年を迎え本社屋の建替えPROJECTが発足した。
この多様性の時代に、さらにコロナ禍によって拍車がかかり 『 本社屋たる建築とは 』 その再定義が余儀なく突き付けられた。同時に、市場物価や *建設コストの急騰に見舞われながら、世の号令によって 『 最小で最大を得る建築 』 こそ必然且つ筆頭のテーマとなっていった。
施工コスト面では、使用するコンクリート量(建物重量)を最小限に抑えつつ最大限の空間を創り出すことに注力し、加えて、杭打ち工事によるコストUPを回避するために、柱スパンをおよそ均等に配置するなどの策を講じ、結果として荷重偏芯が小さいバランスがとれたシンプルでミニマルな躯体ヴォリュームが外郭となった。
1~2Fオフィスは、各フロアをワンルームと捉え、特に1Fは様々な場面に対応出来るよう、すべてカーテンによって間仕切るスタイルとした。内装仕上げは床スラブを一様に直接磨き上げ(ポリッシュ)として構造躯体と内装仕上の一元化を図った。
3F住宅は、北方約1km先にある氏神/須賀神社の祠を毎朝臨まれているご婦人の日常習慣に寄り添うべく、書斎や主寝室など諸室の窓をすべて北方へ向けた個性的なプランとなっている。(松本健志)
* 設計最終段階に於いて、市場の施工単価が著しく急騰したことにより『 鉄骨S造4階建 → コンクリートRC造3F建 』 へと大きく計画方針が見直され、これに伴い実施設計も2度繰り返された。
photo:針金洋介