店舗を出店されようと決意されたご経緯、また自分の店舗(建物)に対するご自身の想いなどございましたら、お教えください。
古賀
若い頃から飲食業界に身を置いて働いてきましたが、当時から漠然と”いずれ自分のお店を持ちたい”という夢を抱いていました。40歳を迎えたときに、所属していた会社の代表取締役へ独立&退職の相談をしたところ、快く出店資金の支援まで申し出ていただき、そんな予想だにしなかった周囲からのご厚意に助けられながら、晴れて出店に至りました。
店舗は、はじめから私の地元であるここ糸島で揚がった魚介類を使った定食屋と決めていました。私としては近年、幹線道路沿いに乱立する表面的に着飾った店舗など、その土地とは何の所以もない恣意的とも言える飲食店舗の在り方には甚だ疑問を感じていました。地産地消は当然のこと。地元に構えるお店として恥ずかしくない、無骨で実直な店舗づくりを目指しました。そんな折に建築家の松本さんと出会いました。(松本さんは前述の代表取締役からのご紹介でした)
建築家・設計士へ求められたことは何でしょうか。
古賀
私から伝えたい事、特に感覚的な部分をより忠実に具現化していただけるかどうか。時には、こちらの想像を超えるような柔軟な発想力をお持ちであれば有り難いですね。
なぜ漁具倉庫だったのでしょうか。
古賀
単純な話で貸テナントが見つからなかったんです。出店を決意してから約2年もの時間をかけて、更地の土地から貸テナントまで、くまなく探し廻りましたが適当な物件は見当たりませんでした。最終的に地元漁港(西浦漁協)が所有する漁具倉庫に目をつけて、何とか貸して頂けるという話まで漕ぎ着けて、これまた漁協組合長さんらの熱いご厚意に助けられました。
※漁具倉庫から飲食店への用途変更には、所定の行政手続きや近隣住民説明等が必要となり、更に1年の時間を要しました。
実際に店舗が出来上がってみて、出来上がる前に想像していたことと、何か違いはありましたか?
古賀
元々が倉庫だったので、果たして本当に店舗として機能するのか心配でした。しかし、いざ出来上がってみるとお客様からは”漁具倉庫が魚の定食屋に変身”というインパクトがあるお店として認知され、大変ご好評をいただいています。
ただいまの店舗の使い勝手はいかがですか?
古賀
大変使い易いです。計画中は厨房・客席ともに少し広過ぎるかもしれないと心配していましたが、実際には適度に余裕があって良かったですね。
今回貴重なご経験をされて、今後同じように建築等をご予定されている周囲のご親族やご友人などへ何かアドバイスがあればお願いいたします。
古賀
何よりも自分の信念を持つこと。その上で自身の感覚的な部分や具体的な考えなどを、言葉を通して建築家・設計士さんへ漏れなく伝えること。そうして納得がゆくまでコミュニケーションを図ることが一番大切なことだと感じました。