境内から玄海灘へ向かって真っ直ぐと延びた夕日が「光の道」と称されてまだ間もない、福津市は宮地嶽(みやじたけ)神社。ここ数年で知名度もあがり、参拝者も多く増えている。
1年程前、この参道沿いに住宅建替えのプロジェクトが発足した。築数十年と目される木造2F建の既存建屋は、特に老朽化が進んでいたため、一度更地に戻してから新たに建替える方針となった。
敷地は間口が狭く奥に伸びた細長い形状で、いわゆる町屋の「鰻の寝床」。計画ではそれを活かし、手前に母屋、奥に離れの2棟で構成し、相互を渡り廊下で繋ぐプランとした。母屋には近所に暮らす親戚が一同に集えるリビングダイニングとキッチン。離れにはご夫婦の寝室と書斎を配置。渡り廊下の両側には中庭を設け、2棟のライトコート・ベンチレーターとして役割を果たしている。
そして母屋のファサードが一番の課題であった。もともと既存建屋が前面道路に背を向けるように建てられていたこともあり、参道に佇む建築として、風情ある町並みに馴染ませようと試みた。木格子や透明ガラス、躍動する構造ブレース(筋交)など、レイヤを重ねることで表情をつくり出し、最も奥に控える上り床の引き込み障子(=ベースレイヤ)によって、光の道が止んだ夜間、また年に数回ある参拝混雑時期の外部からの強い視線を制御することができる。 (松本 健志)
photo:針金洋介