福岡市の西方、糸島市との市境にある西浦漁港。沈む夕陽を浴び潮風に煽られて、港の縁に建つ古びた漁具倉庫。この度、リノベプロジェクトによって地元で揚がった魚をメインにした定食屋がオープン。
拠点探しに3年、行政との立地申請&協議に1年半。地域住民の理解と漁協組合のご厚意に助けられ、遂に店主の想いが実を結んだ。
2000年以前、ひとりのサーファーがサーフショップを構えたことが発端となり、ここ西浦漁港から西の糸島市まで延びる海岸線一体はサンセットロード&ビーチとして徐々に人気を博していった。現在では季節を問わず年間を通して遠方から多くの観光者が押し寄せるスポットとなり、ホテル建設なども進行している。地元出身の店主はそこへ訪れる観光者らに是非地元で揚がった魚を味わってもらいたいと、沿道の洋食店や喫茶店らをよそ目に、漁具倉庫を改修して定食屋を構えることを決意した。
また年々漁獲量が減少し続け、厳しい運営状況にある漁協組合・組合長にとってみても、既存建築物のストックマネジメント(有効利用)は大きな意義をもつ。
あまり言うと店主に怒られてしまうが、今回は改修工事費用を極限まで抑え込んだ条件下で、客席テーブルや椅子はすべて店主自作による。力強い竣工写真を見れば店主の気迫がひしひしと伝わってくる。食す前から、出される定食の美味さは約束されている。(松本 健志)
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西浦漁港漁具倉庫/食事処「かずら」
福岡県福岡市西区大字西浦字サガリ1078-26
photo:針金洋介