BLOG

2019.8.15

思うこと

原風景にて

 

今年もまた盆休みに家族を連れて原風景(実家)に戻ってきた。

 

 

熊本県は八代(やつしろ)市。
いわゆる山里の田園風景とは少し違った、耕作地が数haにも及ぶ広大な干拓地。

ここは、日本三大急流河川のひとつ球磨川が、八代海(有明海)へ辿りつく河口域。
干拓地の輪郭を縁取るように、海岸線を力強く延びた堤防は
ずっしりと黒々として、400年を超える永い干拓事業の歴史を象徴している。

 

元々は祖父が太平洋戦争の終戦間もなく
それまで暮らしていた天草(あまくさ)諸島を後にして
この金剛干拓(こんごうかんたく)へ入植したことが我が家の由来らしい。

その後、私が生まれた昭和50年代に入ると
ここ八代では、畳表の材料となる「井草」の生産が最盛期を迎え
あたり一面、井草の田んぼが広がっていた。 
(現在は井草のほかに、稲作や野菜なども同程度)

 

 

空、海、山、堤防、井草の田んぼ
42年前の風景からは、少しづつ色んなところが変化しているとはいえ
風の匂いだけは昔と変わらない。

深呼吸すると忽ち、幼い頃へタイムスリップ・・・

 

 

” 春先には、田んぼのあぜ道に沢山の「レンゲソウ」や「つくしんぼう」が顔を覗かせる。
姉たちはレンゲソウやシロツメグサで花飾りをつくって楽しそうに遊んでいる。

梅雨が明ける頃には、井草の収穫期を迎え
背丈以上にも伸びた井草を大勢の大人たちが皆で一気に刈り込み、
大量の水で洗浄したあと、昼夜通して家族総出で井草を割る(仕分け作業)。
その傍らで裸足のまま鼻を垂らして遊んでいる僕は、作業中の婆ちゃんにバターボール飴をせがむ。

仕分けされた井草は泥染め(畳表へ加工される工程のひとつ)されたあと、
乾燥機にかけられて倉庫建屋から乾いた泥の匂いが噴出される。
近所でも一番大きかった鉄製の排気フードは、僕らの秘密基地・アジトだった。

井草のあと、二毛作で作付けされた米の収穫までが終わった晩秋には
ゴツゴツとした稲の切り株だらけの田んぼの中を、日が暮れるまで
凧を引き摺りながら無邪気に駆け回っていた・・・ ”

 

 

 

誰しも自分が生まれ育った、自分だけの原風景ってものがある。

里山の景色、実家周辺の街並み、公園の遊具 ・・・何だっていい。
いつだって原風景を前にすれば
自分を原点に戻してくれる、心を整えてくれる、そんな大切な存在に違いはない。

 

 

もしも今、
自分の原風景の現地音源が収録された「ヒーリングCD」が売っているならば
絶対に欲しいかもしれない・・・。

最新機器で抜群の感度で収録されたヤツ。

僕の場合だと
『 8月の夜、田植えを待つ干拓地の水田に、響き渡るカエルや鈴虫たちの大合唱 』
になるだろうか・・・。
さらに付録で「 現地の風の匂いに似せたアロマ 」がついていたら面白い !

 
実家から遠く離れ、日々仕事に追われて
ちょっと気持ちが疲れた時なんか、夜これを聴きながら眠りにつけるとしたら
これほどの癒しはないだろう。

 

 

data:
八代市・金剛干拓 /熊本県八代市北平和町・南平和町

 

CONTACT

092-409-9543

all day 9:00 - 17:00