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2019.6.13

思うこと

完・住宅と作家性

そろそろ、このテーマにも区切りをつけたい。

 

現在、国内における住宅設計の場面で建築家の作家性、その在り方はどうあるべきか?

いま一度、自分の考えを整理しておく。

 

 

ひとつ結論づけると

『 注文住宅における建築家の提案領域は、建築躯体(スケルトン)までに留めてよい 』

※例外として、設計に取り掛かる最初の段階で、住まい手の同意を得た上で
 内装(インフィル)までも躯体と複合的に解くケースでは、この限りではない

 

理由は大きく2つある。

ひとつに
建築家の作家性は個性に溢れているものの、
現代の社会において、住まい手の作家性に見合うだけの確固たる意義が、まだまだ見い出せない状況にある。
したがって、建築家が介入できる領域には限界があり、一線を引かざるを得ない。

もうひとつに
住宅建築では、住まい手自身の作家性を直接表現できる領域が、とても重要になってくる。
たとえ僅かであってもその部分は確保されている必要がある。
その領域というのが、内装(インフィル)から家具・家財に至るまでの、住まい手に最も身近な部分で
やはり一番最後に空間の心地よさを決定づけるのは、住まい手自身であるべきなのだ。

 

この「 作家性の棲み分け 」の考え方は
実のところ、住宅をとりまく様々な側面や課題に対して、多くの点で理にかなっている。

『 住まい手と建築家、両者の満足度 』
『 建築を複合的に解く建築家の性質 』
『 経年によるニーズの変化、住まい手の入れ替わり 』
『 建物による街並みや景観の形成 』
『 建物の普遍的な価値 』

 

また補足として
「 スケルトン&インフィル 」の考え方は
すでにマンションや集合住宅で実践されているのでは? と思われるかもしれないが、
一部のコーポラティブハウスなどを除けば
主に経済的な観点(建物の資産価値)から導かれた答えに過ぎない。

私に言わせると
注文住宅の場面でも、住まい手と建築家、両者の在り方を真正面から突き詰めた場合にも
結果として同じような答えに導かれ、
尚かつ、多くの課題に応える可能性を秘めている。

 

そして、前回ブログでも少し触れたが
住宅に関して言えば建築家のフィールドは、もっとマクロな次元に在るべきなのだ。

住宅ひとつひとつの個別解(=特殊解)に向き合うこともいいが、それよりも
もっと引きで全体を俯瞰して、建築の専門家として多くの課題に応える責務がある。

『 建設コストと住宅ローン 』
『 省エネルギーとパッシブ住宅 』
『 文化的建築の保護と継承 』
『 ストックマネジメントと限界集落 』
『 余剰国産材と次世代木造 』
『 建築資材のリサイクル 』

この意義からも「 作家性の棲み分け 」の考え方はとても有効なのだ。

 

 

最後に
いま私自身の課題(=近い目標)として、これらの考え方に基づいて
これからの住宅の在り方、近い将来の住宅モデル(=プロトタイプ)を
ひとつリリースしたいと考えている。

まだまだ試行錯誤の段階ながら
是非とも鮮やかな解を導いて、少しでも社会に貢献できたならば、何とも幸せなことだ。

 
この難題に、いつも通りマイペースで
『 ひとり親方 』として真っ向勝負を挑んで参りたい。

 

 

 

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